第十六語「住職」

「お坊さんの事を何と呼べばいいか?」これは皆さんにとって永遠のテーマのように思えます(笑) 私も定期的に聞かれるこの疑問に対して、今日は決着をつけたいと思います。まず、いきなり結論から言ってしまいますと「常識の範囲内ならどんな呼び方でもよい」のです。というのも、多くの僧侶は何と呼ばれてもあまり気にしないのです。これというような正解があるわけでもありません。呼び方はたくさんありますが、宗派や地域によっても様々です。「ここでは全国的に使われている一般的な呼び方を取り上げていきます。

まず、タイトルにもある「住職」。実はこの呼び名こそ多くの方が誤解をしているものの一つです。住職とは、お寺の最高責任者、つまり「役職」のことですので、僧侶全般を住職というのは間違いです。会社員を誰でもかれでも社長とは呼ばない事と同じです。一つのお寺に住職は一人しかいません(二つの宗派が共同で護持している善光寺のようなケースは例外)。ですから、役職には敬称が備わっているので「住職様」という言い方も適切ではないということになります。

次は「和尚」。これも宗派によって「おしょう」「わじょう」「かしょう」と読み方が違いますが、「戒を授ける師」を意味するサンスクリット語のウパードヤーヤを漢訳したものです。戒を授かる、修行をするという考え方をしない浄土真宗では使われません。

では、冒頭に書いた結論に戻りますが、浄土真宗のお坊さんが和尚さんと呼ばれたり、住職でない僧侶が住職さんと言われても特に気にすることはありません(慣れていると言えばそうかもしれません)。では、どう呼ぶのが正しいかと言うと、住職には住職、もしそのお寺に副住職という役職の僧侶がいれば副住職(どちらも「さん」をつける必要はありません)、役職まではわからない時は「お坊さん」「お寺さん」「○○寺さん(寺院名)」、場合によってはその僧侶の名前ということになるでしょうか。

僧侶の立場からすると呼ばれ方よりもその人との距離感を大切に思います。丁寧に扱って頂くことは有り難いのですが、それによって距離を感じることがあれば残念なことです。呼び方に戸惑って話しかけるを止めてしまうのは勿体無いのです。「こんな事を聞いたら失礼かも」そう思う必要はありません。疑問や悩みをそのままにしておくのは苦しみの原因となります。もしかしたら解決するヒントをお坊さんからもらえるかもしれません。