第十八語「和顔愛語」

今回の一語は「わげんあいご」と読みます。意味は「和やかな顔と慈愛の言葉で接する」で、浄土真宗の根本経典の一つである『仏説無量寿経』の中に出てくる言葉です。そしてこのお経の中で和顔愛語に続くのが「先意承問(せんいじょうもん)」という言葉で「先に相手の思いを察して受け入れる」という意味です。しばしば、和顔愛語と先意承問はセットで考えられます。

皆さんも一度は聞いたことのある言葉に「布施」がありますが、これを「お坊さんに渡すお金」と思う方もいるかもしれません。しかし、布施は仏教における修行を指す言葉で相手に施すものは形のある物質とは限りません。和顔愛語も立派な布施行の一つであります。

和顔愛語は布施行ですから「相手の為」であるのですが、同時に「自分の為」でもあるのです。「相手を思いやって行動を起こす」ということは、自分に余裕がないとできないことです。「時間がない」「忙しい」「疲れている」こんな時は他人を構うことはできません。余裕の無さはミスや判断の間違いを引き起こします。「相手に笑顔を見せ、優しい言葉をかける」ことは自分自身の今の状態を知るバロメーターとなるのです。

世界では今も争いが起こっていますが、あなたにお聞きします。

「世界平和の為の第一歩」とはどんなことをすることでしょうか?

「兵器を廃絶する」「法律を作る」「政府や国家に訴えかける」どれでもありません。世界平和への第一歩、それは「この私が自分の愚かさに気づく事」です。いつも自分が正しいと思いと信じて疑わない人は「正義」を振りかざします。正義の名の下に人はどんな残酷なことでもしようとします。他人がミスをすれば裁判官になり「お前が悪い」と責め立てますが、同じミスを自分がすると今度は弁護人になって「仕方なかった。そんなつもりはなかった。」と言い訳をするのです。国家間の戦争も、夫婦喧嘩や友人同士の喧嘩も根っこは同じです。自分に都合いい考え方、自分中心の考え方が結果的に周りだけでなく自分自身をも苦しめるのです。和顔愛語は自分も相手も穏やかにさせます。そしてその穏やかな心は伝播していきます。本当の幸せは自分だけでなく、みんなで感じるものだと和顔愛語は教えてくれます。

「あの人モテるよね」「あの人の周りにはいつも人が集まるよね」そう言われる人というのは笑顔が素敵な人が多いような気がします。笑顔が人を惹きつけるのでしょう。女性シンガーソングライターのJUJUさんの代表曲『奇跡を望むなら…』にこのような歌詞があります。

「シアワセにはふさわしい笑顔があるはず」

幸せだから笑顔になるのではありません。笑顔だから幸せなのです。

第十七語「備え」

9月1日は防災の日です。東日本大震災から12年半、時間の早さを感じると共に、まだ過去の話にはできない現実も残っています。今回は防災について考えてみます。

「3分、3時間、3日、3週間」という失われると命に関わる「4つの3の法則」というのがあります。3分は空気、つまり呼吸ができなくなると危険な時間です。3時間は体温、意外に思うかもしれませんが事故や災害で亡くなる人の多くは低体温が原因と言われます。とにかく体を冷やさない、濡れたら着替える、新聞紙やビニールがある場合は体に巻き付けるといいです。3日は水分、日本の水道水は世界の中でも検査基準が厳しく、常温で3日持つそうです。普段、ステンレスボトルを持ち歩いている人もいると思いますが、空になったら水道水を入れておくと思わぬところで役に立つかもしれません。飲用はもちろん、傷口の洗浄にも使えます。3週間は食料、非常食を常備していても美味しくないと食べられません。そこで、スナック菓子やチョコレートは食べやすく高カロリーなのでおすすめします。また、インスタントラーメンを常備している人がいますが、作るのに水を使うので非常食には向いていません。水は飲用に優先してください。

その他あると有用なものとしてライトとラジオが挙げられます。ライトは、防犯、明るくする事で精神的に安定する、救助を待つ時に発見されやすい、といった理由です。ラジオはスマホのバッテリーが無くなった時でも情報が得られ、デマに流される事がなくなります。

備えというのは、平時に行うから意味があり、事が起きてからでは遅いのです。戦争と違って自然災害は前兆がほとんどないので、普段から頭の中で想定をする事が大切です。また、備えというのは自然災害に対するものだけではありません。自分のこれからの「人生」に対する備えも忘れてはなりません。仏教で言えば、「老病死」です。「健康だし」「まだ若いから」そんな「あなたの理屈」は通用しないのが私達が生きている現実世界です。先送りにすればするほど、問題は大きくなります。逆にこの問題が解決に向かっていけば、これからの日々を心穏やかに生きていけるとも言えます。これを機会に身の回りの様々な問題を見直してはいかがでしょうか。