第九語「年齢」

明けましておめでとうございます。突然ですが、この挨拶と同時にあなたの年齢が一つ増えたのをご存知ですか?これが「数え年」という考え方です。まず、数え年の話をする前に、現在私たちが使っている「満年齢」について考えてみます。

満年齢は生まれた時を0歳、誕生日で1歳となります。あっ、「誕生日で」と書きましたが、法律上(民法)では「誕生日の前日が終わる瞬間」に歳を取ります。つまり、4月1日生まれの人は、3月31日の午後12時(午後11時59分59秒の1秒後)という事になります。少しややこしい話ですが、私たちは「午後12時=午前0時」と考えますが、法律上では「午後12時」が前日、「午前0時」が翌日になります。

余談ですが、これに基づいた考え方が学校教育法に反映されており、「4月1日生まれは3月31日午後12時に歳を取る事から前年度生まれ」であり、4月2日生まれから学年が変わるのです。法的には4月1日が入学日ですが、小学校一年生の場合、一年でこの日のみ生徒全員が6歳なのです。

一方で、数え年においては生まれた時が「1歳」とし、1月1日に歳を取る年齢の数え方です。つまり、人によって「1歳から2歳までの長さが違う」と同時に、誕生日に関係なく全ての人が1月1日に歳を取るのです。冒頭の「『明けましておめでとう』で歳を取った」のはこういう意味です。

数え年は日本以外にも中国や韓国で使われています。以前に韓国人と話をしていて年齢を聞いたら「韓国式でか?」と聞き返されました。後でわかったのですが、この韓国式というのは数え年の事であり日本以上に日常でも使われているようです(厳密には韓国には3通りの年齢を表す方法がありますが割愛します。また、法律が改正されて今年6月から満年齢に統一されることになりました。)。

数え年はまた、仏教の考え方が反映されています。起算日(命日)を1とするので、初七日は6日後、49日は48日後、3回忌は2年後となるのです。(「1周」忌ですから、この法要のみ満1年で行う)

年齢に関してもう一つ。位牌や墓石に入れる年齢に「享年」と「行年」がありますがこの違いは何でしょうか?元々の意味を簡潔に言いますと、享年=生きた年数、行年=何歳まで生きたか、ということです。享年は年数だから「享年100」のように歳は付けないとか、享年と行年は数え年と満年齢の違いであるなど言われていますが、現実には「享年100歳」という記述も多く見られ、享年も行年も満年齢と数え年が混在していますので必要以上に気にすることはないでしょう(葬儀の位牌を書く僧侶の考え方次第と言えます)。ただ、個人的な意見では、行年は「何歳まで娑婆世界で修行したか」という意味があるので、より仏教的な気がしています。

最後になりますが、年始の挨拶である「明けましておめでとう」という言葉には深い意味があります。私達は当たり前のように新年を迎えたかのように思っていますが、その一方で、この新しい年を迎えたくても迎えることのできなかった人達がたくさんいます。私のいのちが自分の意思ではどうにもならないという事実に目を向け、様々な支えの中に新しい年を迎えることが出来た事に感謝し、その意味を問いながら歩んでいきたいものですね。