お盆という仏事は、お釈迦様の弟子であった目連(もくれん)が餓鬼道(がきどう、食べ物、飲み物が火に変わってしまう飢えの世界)に落ちていた亡き母を供養したことから始まりました。余談ですが、餓鬼道に落ちた者は食べ物を貪ろうとする事から、その様に似た子供を「ガキ」と呼ぶようになりました。
「お盆はいつやるの?」こう聞くと人によって答えが変わります。正確には土地によって違うのです。大きく分けて3つの時期に分けることができます。
A・7月15日を中心とした新暦の盆
B・8月15日を中心とした月遅れの盆
C・旧暦の盆
本来、お盆は「旧暦の7月15日を中心として行う仏事」でありました。旧暦とは、月の満ち欠けの周期を基にした暦で明治5年まで採用されていました。私達が現在使っている新暦は太陽暦と言われ、地球が太陽の周りを回る周期を基にしています。旧暦と新暦では一年の長さが違うため、その修正のために年によって差が違います。大雑把に言うと、「新暦=旧暦+(20〜50日)」くらいだと思ってください。
旧暦から新暦になっても7月15日を中心としたのがA、現在でも旧暦の7月15日で行うのがCなのです。しかし、前述の通り旧暦と新暦では年によってずれの差ができるので、毎年同じ時期に行う事ができません。そこで生まれたのが、ずれの平均値を1ヶ月として行う「月遅れ」という考え方です。つまり、7月15日から1ヶ月ずらした8月15日に行うのがBです。Bの事を「旧暦の盆」「旧盆」と言う方がいますが、これは間違いです。また、Aを新盆(しんぼん)と言う人がいますが、新盆(にいぼん)=初盆(初めて迎えるお盆)と混同されるのでこのような言い方はお薦めしません。
月遅れという考え方はお盆に限らず、様々な行事に見られます。例えば、七夕は旧暦の7月7日ですが、日本三大七夕まつりの平塚は新暦の7月、仙台は月遅れの8月に行われます。よくよく考えてみますと、新暦の7月7日は日本のほとんどの地域はまだ梅雨の最中で天の川が見えないことが多いですよね。
地域で見てみますと、Aは東京、静岡、金沢などの一部地域、Bは全国的、Cは沖縄、奄美地方という分類になります。また、八王子は農家の繁忙期を避けて8月の初めに行った名残があるなど、その土地によって時期や飾り付けなど様々です。私は以前、旧盆の時期(その年は9月初旬)に沖縄を訪れた事があり、エイサーと呼ばれる伝統芸能を見る事ができました。沖縄のお盆は独特で大変興味深いものです。ちなみに誓願寺で勤めるお盆参りは、7月と8月で半々くらいです。どちらで勤めるかはご自身の出身地やスケジュールで決められているようです。
お盆という仏事に限っては、宗派による違いよりも地域による違いが大きいと言えますが、お盆の迎え方やお飾りについては、まずご自身の宗派のお坊さんに聞いてみるとよいでしょう。それと、「浄土真宗はお盆をしない」と思っている方がいますが、これは正しくありません。他の宗派のようにお盆用の特別な飾りをせず普段通りの飾りでお勤めをします。
八王子浄苑では毎年8月にお盆法要を行なっております。是非、お参りください。