第二十八語「喫茶」

「今年の夏は暑いですね」毎年言っているような気がしますが、今年は特別な感じがします。熱中症にはお気をつけください。お墓は墓石からの照り返しがあるので、他の場所に比べて気温が高いです。水分はしっかり摂りましょう。

今日の話は「喫茶」です。最近では喫茶店という言い方はあまり聞かなくなりましたが「お茶しよう」という言い方はまだ残っている気がします(実際に飲むのはお茶というよりはコーヒーですが)。実はこの喫茶という言葉は仏教に由来する言葉です。私達が日常何気なく使っている言葉には仏教由来の言葉がたくさんあります。今後も機会があればそのような言葉を紹介していきたいと思っています。

喫茶の語源は「喫茶去(きっさこ)」であり、禅の言葉です。意味は「お茶でも飲んでいきなさい」という意味です。初めて来た人も、何度も訪れたことのある人でも、元気のある人もない人も、学のある人もない人も、お金のある人もない人も分け隔てなく迎える。禅語は私の専門外ですので詳しいことは言えませんが、そこには誰もを包み込む大きな慈悲があるのです。一方でそれは単なる優しさだけではないのかもしれません。「茶でも飲んで頭を冷やせ」そんな厳しさも持ち合わせもいると私は思います。自分の頭の中をからっぽにしてみる。本当にそれが正しいのか?適切だったのか?自分自身と向き合うきっかけがお茶だと思います。

英語ではcoffee break(コーヒーブレイク)と言いますが、コーヒーを飲むことで、疲労や行き詰まりを壊す(ブレイク)作用があるのです。極めて当たり前の話なのですが、私達人間にとっては心身共に休息が必要です。ついつい無理をしてしまうのが私達ですが、体や心に疲労をもったままでは何をするにも効率が悪くなります。「仕事が出来る人」は「休むことも上手」と言われます。あえてこの言葉を使いますが、疲れたらサボってください。「疲労」はあなたの体や心の叫びです。そのサインをしっかり受け取りましょう。

冒頭に書いたように、今年の暑さは危険です。お墓参り、ご法事の後は管理事務所の休憩所で休んでからお帰りください。管理事務所の職員も手が空いている時にはお話をすることもできます。茶飲み友達に会う感覚で話しかけてみてください。もしかしたらその会話の中から新しい発見に出会えるかもしれません。お待ちしております。

第二十七語「血液型」

私は海外での生活経験があるのですが、日本人であるが故に聞かれる質問というのがいくつかありました。

「日本人は普段和服は着ないのか?」
「たくあんは何故黄色い?」
「日本と中国は同じ文字を使うが意思の疎通はできるのか?」

考えもしない角度から様々な質問が飛んできては答えに困ると同時に、日本人として日本を見つめ直すいいきっかけとなりました。しかし、中には理解ができないものもありました。その代表格が、


「日本人は親しくなると何故血液型を聞いてくるのか?」


というものでした。この質問をされるのは一度や二度ではなかったのです。私は誰かに血液型を聞くということは一度もなかったので理解ができなかったのですが、日本人の友人にこのことを話してみると「きっと、血液型を聞いて性格を分析しているんだよ」と返ってきました。ナルホド、目から鱗が落ちた瞬間でした。

ちなみに海外では怪我や病気などをして初めて自分の血液型を知るというケースが少なくなく、自分の血液型を知らないという人もたくさんいます。ですから、血液型を聞かれるという事自体が初めてという人もいますし、中には「日本人はみんな医者なのか?」と笑う人もいました。

いわゆる「血液型別性格判断」が存在するのは日本だけです(日本に影響を受けた一部の地域であるようですが)。日常会話の中で血液型の話題が出てくる事も多々あります。それだけ日本人の中に根付いている血液型ですが、ここではっきり申し上げておきます。

「血液型」と「性格」の関連は全くありません。

これは医学的にも言われていることであります。ですから、血液型別性格判断は根拠がないですし、それで人を判断するのは物事を見誤ることになるのです。こう書きますと

「いや、そんなことはない。私は性格から血液型を当てる事ができるし、経験上このような判断に間違いはなかった」

と言われる人もいるかもしれません。しかし、それは単なる「思い込み」であってバーナム効果と呼ばる「誰にでも当てはまるような特徴をあたかもピンポイントで当たっているかのように思い込んでしまう心理」の事です。例えば、

「ここは丁寧に進めたいと思う事柄がある」
「極力人と揉め事を起こさないように上手く人付き合いをする」
「疲れている時や時間がない時には普段とは違う感情や行動になる」
「これだけは譲れないと思えることがある」

上記のような事は誰にでも当てはまる事です。しかし、それぞれを「几帳面」「八方美人」「二重人格」「自己主張が強い」と言い換えて、それを血液型にはめ込めば該当するのは当然なのです。また、人間は「先入観や信念などを正当化する為に都合のいい情報だけを取り入れようとする」確証バイアスと呼ばれる傾向があります。「A型は⚪︎⚪︎である」という先入観を持っている人は「⚪︎⚪︎なA型の人」だけを注目するようになり、該当しないA型を排除しようとするのです。

間違った情報で考えれば事実を見誤ります。その人を知りたかった血液型を見るのではなく、人となりとしっかり向き合う事です。これでもなお「血液型と性格は関連がある」と信じているあなたは、どうか詐欺にひっかからないように注意してください。繰り返しますが「自分は正しい」と疑わない事が何がウソで何が本物かを判別できなくさせるのです。