第十七語「備え」

9月1日は防災の日です。東日本大震災から12年半、時間の早さを感じると共に、まだ過去の話にはできない現実も残っています。今回は防災について考えてみます。

「3分、3時間、3日、3週間」という失われると命に関わる「4つの3の法則」というのがあります。3分は空気、つまり呼吸ができなくなると危険な時間です。3時間は体温、意外に思うかもしれませんが事故や災害で亡くなる人の多くは低体温が原因と言われます。とにかく体を冷やさない、濡れたら着替える、新聞紙やビニールがある場合は体に巻き付けるといいです。3日は水分、日本の水道水は世界の中でも検査基準が厳しく、常温で3日持つそうです。普段、ステンレスボトルを持ち歩いている人もいると思いますが、空になったら水道水を入れておくと思わぬところで役に立つかもしれません。飲用はもちろん、傷口の洗浄にも使えます。3週間は食料、非常食を常備していても美味しくないと食べられません。そこで、スナック菓子やチョコレートは食べやすく高カロリーなのでおすすめします。また、インスタントラーメンを常備している人がいますが、作るのに水を使うので非常食には向いていません。水は飲用に優先してください。

その他あると有用なものとしてライトとラジオが挙げられます。ライトは、防犯、明るくする事で精神的に安定する、救助を待つ時に発見されやすい、といった理由です。ラジオはスマホのバッテリーが無くなった時でも情報が得られ、デマに流される事がなくなります。

備えというのは、平時に行うから意味があり、事が起きてからでは遅いのです。戦争と違って自然災害は前兆がほとんどないので、普段から頭の中で想定をする事が大切です。また、備えというのは自然災害に対するものだけではありません。自分のこれからの「人生」に対する備えも忘れてはなりません。仏教で言えば、「老病死」です。「健康だし」「まだ若いから」そんな「あなたの理屈」は通用しないのが私達が生きている現実世界です。先送りにすればするほど、問題は大きくなります。逆にこの問題が解決に向かっていけば、これからの日々を心穏やかに生きていけるとも言えます。これを機会に身の回りの様々な問題を見直してはいかがでしょうか。

第十六語「住職」

「お坊さんの事を何と呼べばいいか?」これは皆さんにとって永遠のテーマのように思えます(笑) 私も定期的に聞かれるこの疑問に対して、今日は決着をつけたいと思います。まず、いきなり結論から言ってしまいますと「常識の範囲内ならどんな呼び方でもよい」のです。というのも、多くの僧侶は何と呼ばれてもあまり気にしないのです。これというような正解があるわけでもありません。呼び方はたくさんありますが、宗派や地域によっても様々です。「ここでは全国的に使われている一般的な呼び方を取り上げていきます。

まず、タイトルにもある「住職」。実はこの呼び名こそ多くの方が誤解をしているものの一つです。住職とは、お寺の最高責任者、つまり「役職」のことですので、僧侶全般を住職というのは間違いです。会社員を誰でもかれでも社長とは呼ばない事と同じです。一つのお寺に住職は一人しかいません(二つの宗派が共同で護持している善光寺のようなケースは例外)。ですから、役職には敬称が備わっているので「住職様」という言い方も適切ではないということになります。

次は「和尚」。これも宗派によって「おしょう」「わじょう」「かしょう」と読み方が違いますが、「戒を授ける師」を意味するサンスクリット語のウパードヤーヤを漢訳したものです。戒を授かる、修行をするという考え方をしない浄土真宗では使われません。

では、冒頭に書いた結論に戻りますが、浄土真宗のお坊さんが和尚さんと呼ばれたり、住職でない僧侶が住職さんと言われても特に気にすることはありません(慣れていると言えばそうかもしれません)。では、どう呼ぶのが正しいかと言うと、住職には住職、もしそのお寺に副住職という役職の僧侶がいれば副住職(どちらも「さん」をつける必要はありません)、役職まではわからない時は「お坊さん」「お寺さん」「○○寺さん(寺院名)」、場合によってはその僧侶の名前ということになるでしょうか。

僧侶の立場からすると呼ばれ方よりもその人との距離感を大切に思います。丁寧に扱って頂くことは有り難いのですが、それによって距離を感じることがあれば残念なことです。呼び方に戸惑って話しかけるを止めてしまうのは勿体無いのです。「こんな事を聞いたら失礼かも」そう思う必要はありません。疑問や悩みをそのままにしておくのは苦しみの原因となります。もしかしたら解決するヒントをお坊さんからもらえるかもしれません。